【レポート】「未来の体育共創サミット2020」体育館会場で行われたスポーツ共創体験とICT体験
戸倉順平(フリーライター)
2020年1月11日、東京都にあるお茶の水女子大学附属小学校にて、「未来の体育共創サミット2020~出会い、つながり、つくる!!~」が開催された。シンポジウムやワークショップ、さらにブース展示、体験コーナーが設置され、現役の教師、研究者、有識者といった150人を超える参加者が交流するビッグイベントとなった。
当レポートでは「未来の体育共創サミット2020~出会い、つながり、つくる!!~」の体育館会場で行われた以下の2つのワークショップを紹介する。
スポーツ共創体験ブース「老若男女能力を問わず、幅広い人々と一緒に実施する体育(運動)」(Circle of Life 水野碧里)
スポーツ共創体験ブース「老若男女能力を問わず、幅広い人々と一緒に実施する体育(運動)」を担当する「Circle of Life」は、理学療法士、トレーナーとして活動をする水野碧里氏が代表を務める社会人サークルだ。「年齢・性別・スキル問わず、誰でも楽しめるスポーツ(familiar sports)を介して、居場所と思えるイベント創り」を掲げる。体験ブースでは5種目のオリジナルスポーツの体験会が行われた。
新種目「ファイヤーフライダウジング」
スモークがかかってほとんど見えないゴーグル「ダウジングメガネ」を装着。制限時間1分以内に約1~2mほどの範囲に置かれている大量の豆級の中から、蛍をイメージした布が付いている豆級を何個拾えるかを競うというもの。スモークがかかっているため、至近距離まで近づいてもようやく光が少し見える程度。布付きかどうかはわからないので、手で確認をしながら拾っていく。
「ファイヤーフライダウジング」には、挑戦者=勇者、「ダウジングメガネ」=秘宝として、「ダークフィッシャー」というボスを倒すために7匹の蛍を集めるというファンタジー要素の設定があるのも面白い。
新種目「ふ~ふ~ベジタブル」
野菜の形をした玩具を、フライパンに見立てたウチワに乗せて、リレー形式でゴールを目指す。
ウチワからウチワに野菜を受け渡す際には、ウチワ同士を接触させて受け渡す事はできないルールとなっている。重量がある野菜の玩具がウチワからこぼれ落ちないよう受け渡すのは、なかなか難しい。
落下した野菜は「落ちた食べ物を3秒以内に拾えばOK」の通称「3秒ルール」という事で、すぐに拾えば次の参加者にそのまま渡せる。ただし、拾った野菜は「ふーふー」と吹く必要がある。制限時間は2分。野菜ひとつにつき、1点獲得となる。野菜の玩具は中央がマジックテープで止められており、落下の衝撃で、2つに割れてしまった場合は0.5点としてカウントされる。「Circle of Life」によって作られた新しいスポーツである。
新種目「虫虫パニック」
カブトムシをイメージした小さな茶色い人形と、ゴキブリをイメージした黒い人形を「パニックメーカー」と呼ばれる参加者がランダムに投げる。
「パニッカー」と呼ばれる参加者はハエたたきと虫網をそれぞれ片手ずつにもち、投げてきた人形がゴキブリならハエたたきで落とし、カブトムシなら虫網で拾う。
全部投げ終わったら、虫網に入っているカブトムシ1匹につき3点、ゴキブリ1匹につき-5点で計算し、点数の合計を競う。瞬時に虫の色を見極める力と、ハエたたきか虫網のどちらを使うかの反射神経も求められるスポーツ。
新種目「立つんだじょ~!!」
発泡スチロールで作られたブロックの上に座り、腕を胸元に十字に組んでどちらか片方の足を上げた状態で立ち上がり、そのまま両足を突かずに片足立ちで10秒キープできたらクリア。
ブロックがひとつ減らされて、再度挑戦をする。残りブロックが少ない程、階級が高いと評価される。
階級は「一般ピーポーですが何か?級!」や、「隠れ筋肉作ってます級!」などネーミングがユニーク。ブロックの残り個数によって、筋力や体感などの体の年齢がわかるのも面白い。
新種目「ストラックウィルス」
人間の口内をイメージしたオブジェに向かって、1人の参加者がボールを投げ込む。オブジェの前には2人のプレイヤーが立ち、巨大なマスクを片手ずつで持ってボールが穴に入らないようにブロックする。
ボールを投げる側はサングラスで視認性を衰えさせた上、巨大なマスクのブロックによってボールが入りづらい。
一方で、マスクを持っている2人もブロックしようと闇雲に引っ張ったりすると、マスクが横に伸びてしまい、その分縦に防御できる面積が減る。息を合わせてマスクを動かす必要がある。
「ストラックウィルス」にはSFチックな世界設定がある。ボールを投げる人=「イボルス」という侵略者であり、マスクで防御する人=地球防衛軍である。
「即席!スポーツ創り体験」コーナー
会場内には「即席!スポーツ創り体験」のコーナーを設置。何もないところから考えるのではなく、今までのスポーツや遊び、そしてルールや小道具の例を組み合わせながら、簡単で気軽にスポーツ創りを楽しめる。ヒントなど発想の方法もアドバイスが用意されており、初心者向けのテキストとしてわかりやすく解説されていた。
プログラミング教育ツール体験ブース「『体育×ICT』で 体育の可能性を 拡張しよう」 (千葉大学教育学部附属小学校 永末 大輔、同校 小池 翔太)
同会場にてワークショップ「『体育×ICT』で体育の可能性 を拡張しよう」が行われた。担当は千葉大学教育学部附属小学校の永末大輔氏と小池翔太氏。
ICTとは「information and communication technology」の略称。「情報通信技術」とも呼ばれ、コミュニケーションや情報伝達、情報の共有ができる技術を指す。スマートフォンやSNSがこれに該当する。
ワークショップではそんなICTのプログラミング教育ツール「MESH」が使用された。プログラミング言語を使わずに、アプリとIoTブロックと呼ぶ手のひらサイズの端末を使って直感的な操作でプログラムを構築できるツールだ。ボタンや、LEDや人感センサー、温度・湿度センサーなど全部で7つの端末とアプリを同期させてプログラムが組める。シンプルなブロック型のため、少々粗雑に扱っても壊れない。
ボタンを押してLEDが光るという単純なものから、音声再生などの機能も使った複雑なものまで発想次第だ。千葉大学教育学部附属小学校では「レストランのボタンを再現する」「お宝を守るセンサーを作る」「不思議なお宝を作る」といった授業を行っている。
ワークショップでも同じく「レストランのボタンを再現する」「お宝を守るセンサーを作る」「不思議なお宝を作る」という3つのミッションが用意された。小池氏が使用する端末の種類を提示しながら、参加者たちに自由なゲーム制作を促していた。多くの参加者が「MESH」初体験。経験者から使い方を聞きながら、新しい形のプログラミング体験を楽しんだ。
「MESH」を体験した参加者からは「玩具のように乱暴に扱えるツールは子どもたちの発想を刺激しやすく、アクティブな使い方が出来る」との声があがった。
ダンスの授業とプログラミング教育の掛け合わせ「表現リズム遊び」 ――千葉大学教育学部附属小学校
ワークショップでは「MESH」を授業に取り入れた具体例として、千葉大学教育学部附属小学校が行った「表現リズム遊び」が紹介された。
まずは「MESH」などICTを使わずに、小学校のダンスの授業にて「表現リズム」の運動をじっくりと行う。このステップは小学生たちに「表現リズム」が遊びのように楽しい体験だと知ってもらうためである。十分に楽しさが伝わったら、「MESH」を取り入れたステップへと入る。
「MESH」のプログラミングはミッション形式で小学生に教える。すると「表現リズム」そのものの楽しさを知っている小学生たちはその楽しさをプログラミングに活かすべく意欲的に考え、作り始める。
「表現リズム」というダンスの授業とプログラミング教育の組み合わせが、功を奏した瞬間である。
以上の授業が成功事例として紹介された。
いますぐスポーツ共創をやってみよう!
戸倉順平
1980年生まれ。フリーライター。ウェブメディアを中心にゲーム、アニメイベント、eスポーツ関連の取材や、声優アーティスト、アニソンシンガーのライブレポートなどを執筆。
この記事はスポーツ庁 2019 年度
「スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト・新たなアプローチ展開」にて作成された記事です。
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