【レポート】宮崎県小林市 南校区まちづくり協議会で「こばやし熱中運動会をつくる!」

吉村 秀昭(南校区まちづくり協議会会長・一般社団法人熱中こばやし理事)

 スポーツ共創との出会いは、2018年10月20日(土)に宮崎県小林市で開催された宮崎こばやし熱中小学校(以下「熱中小」)の第4期授業で一般社団法人運動会協会理事 犬飼博士先生を招いた「IT社会とスポーツの変化 こばやし熱中運動会やってみませんか?」の授業である。

「新しい運動会の種目をつくる」というワークショップで生徒60名が講義の後に運動会の新種目を考えた。

 2019年1月、南校区まちづくり協議会(外部リンク)(以下「まち協」)と小林市社会福祉協議会の共催ワークショップの中で参加者の中から住民参加型の新しい運動会を開催したいとの意見が上がり、同年3月、九州大学で行われた「第1回 未来の福岡の運動会」に参加した。当日は100名を超える参加者で家族、学生、ハンディキャッパー、エンジニア等本当に多様な仲間との競技&協議・競争&共創を行った。

2019年3月17日(日曜日)九州大学で行われた「第1回 未来の福岡の運動会」

なぜ「みんなでつくる新しい運動会」を行ったのか。スポーツ共創人材育成ワークショップ合宿2019でこれまでにない運動会を学ぶ

 2019年5月、「まち協」総会で「みんなでつくる新しい運動会」の開催を提案をした。自治会(区・組)などの地域コミュニティは、加入世帯率の低下や役員等の活動の担い手の固定化などにより共同体としての機能が低下しつつあり、地域住民も価値観や課題等を共有していくことが困難になりつつある。その現状を踏まえ、「まち協」などの地域コミュニティ活動を通じて、市民が自治意識を高め、互助の必要性を再認識し、連帯意識や相互の絆を再生していくための一つのきっかけをつくるためである。

スポーツ共創人材育成ワークショップ合宿2019の研修の様子

 同年9月、東京にてスポーツ庁の事業 「2019 年度スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト・新たなアプローチ展開」の一環として開催された、スポーツ共創人材育成ワークショップ合宿2019に参加した。対話哲学や、Deverop(つくる)+PLAY(あそぶ)=DEVELOPYAY(デベロップレイ)といった造語等を学んだ。

 初日はアクションプラン(ゴール)を設定し、考え方と対話の練習(哲学対話)。2日目は、運動会のハッカソン(アイデア出し)を体育館で行い、デベロップレイ(スポーツ共創)を行った。具体的に4種類のスポーツを共創した。

 第1種目「ターザンボーリング」、第2種目「ずぼらサッカー」、第3種目「タピオカバランスティー」、第4種目「3D綱引き」

 午後からは実際に4種目を競技し運営し、MCを務めた。台本、マニュアルを作成し、選手入場・開会の言葉・選手宣誓・開催の趣旨説明し、審判委員長・音響・パワーポイント・チームリーダーの役割分担、安全の確保を行いつつ、4つの競技を行った。その後、夜には「デベロップレイヤー」「ファシリテーター」「ディレクター」「プロデューサー」としての振り返りを行った。

スポーツ共創に関わる人は、大まかに4つの役割に分けることができる。「スポーツ共創ワークブック」より

 3日目は初日に作成したアクションプランに従い「第1回こばやし熱中運動会」をプレゼンし、参加者と講師陣からアドバイスを頂いた。

 これまでに無い、運動会を。知らない人だらけの参加者が、運動会の競技発案から創り、実際に運動会を開催してみんなで楽しむ。競技の楽しさだけではなく、自分達で競技を創って楽しんでもらう。勝ち負けだけではない充実感。創造力・コミニケーション・運動・交流・連携・協力・発信力……。
 運動会には様々な要素が含まれていて、社会や教育、地域活性化、地方創生など多くの場面、場所で「運動会」は活用が出来ると実感した。

2019年9月14.15.16日スポーツ共創人材育成ワークショップ合宿2019

いよいよ実行! 第1回こばやし熱中運動会の流れ

 同年10月「第1回こばやし熱中運動会」を開催。

 初日は運動会のハッカソンを開催。第6期「熱中小」の授業に「まち協」も参加し、犬飼博士先生と株式会社運動会屋代表取締役 米司隆明先生を招いて「運動会とは?」の授業で4つの役割を教えて頂いた。運動会のゴール・完成の定義・運動会と社会の関わり合いを学び、「第1回こばやし熱中運動会」では以下のように定義した。

「プロデューサー」=運動会と宮崎県小林市をつなぐ役割。

「ディレクター」=運動会を開催する目的を世代間の交流の場と位置付け目的達成の手法を提案する役割。

「ファシリテーター」=運動会の競技をハッカソン参加者とともに考え、安全や参加者の構成等を考慮し目的の達成のために環境を整える役割。

「ディベロップレーヤ」=Deverop(つくる)+PLAY(あそぶ)=DEVELOPYAY(デベロップレイ)※造語。運動会に参加し競技をつくる事と遊ぶ事が一体となっている人。

 運動会を開催するにあたり、事前にテレビ会議を講師の先生方と3か月ほど前からの行った。当日はプロデューサー・ディレクター・ファシリテーター・メインMCはスポーツ共創人材育成ワークショップに参加したメンバーで決定し、デベロップレイヤーのみが初参加となった。

 運動会における私(吉村 秀昭)のアクションプランは以下となる。

なにを? 「こばやし熱中運動会

いつ?どこで? 「2019年10月19日ハッカソン20日運動会を宮崎県小林市コスモホールで開催

だれと? 「南校区まちづくり協議会の区民と一般社団法人熱中小林の生徒」

そのゴール(成果)はなんですか? 「世代間の交流とまちづくりを共感する機運の醸成

なぜあなたが? 「『まち協』会長であり、まちづくりへの無関心を関心に変えたい思い

課題になることはなんですか? 「完成した競技をハッカソンに参加していない運動会参加者にどう伝えるのか。そして、次回開催に向けての継続性」

 ハッカソンでは運動会定番の用具からデジタル機器まで準備し、参加者全員でアイデアを出し合い、ファシリテーター4人が各チームに分かれ、デベロップレーを行った。「競技中のルールが分かりやすいか?」「安全に配慮しているかどうか?」などの意見を出し合い、競技内容を決定していった。

2019年10月19日(土曜日)第1回こばやし熱中運動会ダイジェスト

「第1回こばやし熱中運動会」当日、午前中からスタッフとファシリテーターにより運動会の予行練習を行い、開会式の流れ・競技の進行具合・審判・点数・時間配分・アトラクション等を確認し、競技のルールを参加者に伝えるために競技前にスタッフでデモンストレーションを行うことを決めた。

 午後からの運動会では、運動会の空間をひとつの小さな「小林市」と考え、運動会の見学者はまちづくりのプレーヤーと決めつけて、2歳から最高齢92歳までの運動会を行った。


新種目「ゆらして送れ!YCAMボール」

新種目「ゆらして送れ!YCAMボール」

 第1種目はYCAM(山口情報芸術センター)で開発された「YCAMボール」を使った「ゆらして送れ!YCAMボール」。揺れた回数をカウントするボールを振りながら、チームメイトにパスする。制限時間内にカウントの多かったチームの勝利となる。


新種目「ビーズツムツム」

新種目「ビーズツムツム」

 第2種目はファシリテーター藤原和将さん(a-project 株式会社(外部リンク))が開発された不整地トレーニング用ビーズクッションを使った「ビーズツムツム」。ビーズクッションをラグビーボールと仮定してチームで運んで積み上げる競技。積み上げたビーズクッションのタワーの周りを3周して、またチームで運んで積み上げる。スピードと正確性を競う。


新種目「おじゃみ とっちゃろかい」

新種目「おじゃみ とっちゃろかい」

 第2種目は小林市の左近太郎を使った「おじゃみ とっちゃろかい」。左近太郎とは谷川の流れを利用して作った米つきの装置であり、装置を模した木製の器具で「おじゃみ(お手玉)」を高く上げ、バケツで拾う競技。制限時間内にいくつのおじゃみを獲得するかの競技。


新種目「小林市人材発掘ゲーム」

新種目「小林市人材発掘ゲーム」

 第4種目は究極の人間借り物競走「小林市人材発掘ゲーム」。お題に沿った人を参加者の中より連れてきて競う。当日は身長の合計を7メートル・年齢合計を300歳で競い、2歳から最高齢92歳までの参加者が競った。


新種目「合体バブルボールだるま」

新種目「合体バブルボールだるま」

 バブルボールと大玉ころがしの大玉を使った競技。子どもチームはバブルボールを転がして宮崎特産完熟マンゴーの箱をバブルボールの中心に詰めて戻ってきてから大人チームとバトンタッチ。大人チームは大玉を地面に落とさずに運び、最後にだるまのようにバブルボールの上にのせるタイムトライアル競技。


第1回こばやし熱中運動会における課題と第2回への展望

 競技名だけでは中身が分からないのがこの運動会の面白さ。デベロップレイヤーだけではなく見学者も「みんなでつくる運動会」の参加者です。60名の参加があり、当初の目標である「世代間の交流とまちづくりを共感する機運の醸成」に起因した運動会を達成できました。

 今回の運動会において「運動会をつくる」という事が区民に伝わりにくく、参加者の募集に苦労した。しかし、参加者からは一同に「こんなに楽しい運動会ははじめて」「子どもと参加し、親子のコミュニケーションの一助となった」「多くの若者が街づくりを真剣にそして楽しく活動している姿が伝わった」とのご意見を頂いた。当日はUMKテレビ宮崎の夕方ニュースで運動会が放映され、後日、宮崎日日新聞と小林市広報に掲載された。

 来年の第2回こばやし熱中運動会の開催も決定し、今回の動画をSNS等で発信し来年の参加者が増える取り組みを行っていきたい。

 小林市としては今回スポーツ振興課の後援に留まっていたが12月議会の一般質問の答弁で小林市大運動会の活性化のために「第1回こばやし熱中運動会」の成功を活かして行きたいとの答えを頂いた。

 最後にこの運動会を開催するにあたり、一般社団法人運動会協会 犬飼博士先生・株式会社運動会屋代表取締役 米司隆明先生をはじめ、スポーツ共創人材育成ワークショップ合宿2019に携わって頂きました多くの方々、そして共催事業を引き受けて頂きました一般社団法人熱中こばやし(外部リンク)の皆様に感謝申し上げます。

資料映像 STUDIODIVE 大山正也 https://studiodive.info/ (外部リンク)

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スポーツ共創ワークブック ダウンロード(PDF 23MB)

吉村 秀昭

こばやし熱中運動会実行委員会

1979年、宮崎県生まれ。医療法人雄信会(外部リンク)理事。南校区まちづくり協議会会長。一般社団法人熱中こばやし理事。2018年10月に宮崎こばやし熱中小学校で「未来の運動会」に出会い九州でも新しい運動会をしたいと思い立ち「第1回こばやし熱中運動会」を企画運営した。

この記事はスポーツ庁 2019 年度
「スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト・新たなアプローチ展開」にて作成された記事です。
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出典:スポーツ庁WEBサイトspotsuku.com