【レポート】「楽しそう!」「やってみたい!」――未来の保土ケ谷の運動会2020に向けた1年の取り組み――(保土ヶ谷小学校)

今辻 宏紀(横浜市立保土ケ谷小学校 教諭)

※本レポートは2020年2月1日(土曜日)、3日(月曜日)開催の「未来の保土ヶ谷の運動会2020」に向けた保土ヶ谷小学校の子どもたちの取り組みに関するものです。

 保土ケ谷小学校では毎年5月に春の運動会を開催します。2019年5月、運動会協会スタッフが「未来の運動会」を紹介すると、目を輝かせた子どもたちから「楽しそう!」「やってみたい!」という発言がたくさん飛び出しました。「未来の保土ケ谷の運動会」に向けた1年のはじまりです。

「なぜ、遊びって楽しいのか?」「遊びってなんだろう?」「楽しいってなんだろう?」

「未来の保土ケ谷の運動会」への取り組みは総合的な学習の時間×体育の時間のなかで行います。その時間は「遊び」をめぐる哲学対話からスタートしました。これは探究的な学習のストーリーのはじまりを意味しています。

 子どもたちとともに、愛する保土ケ谷のまちを盛り上げること。子どもたちとともに、「未来の保土ケ谷の運動会」を成功させること。それが1年間の目標です。

5月 哲学対話「つくる、ってどういうことだろう?」

「する・みる・ささえる・しる」ということと、「つくる、ってどういうことだろう?」「100年後の運動会ってどうなっているのだろう?」「未来って?」など、様々な角度から子どもたちは問いについて対話しました。当たり前に思っていた「遊び」や「スポーツ」に対する自分の考えを問い直し、新たな探求への意欲を持ちます。

6月 スポーツハッカソン「学校中のモノを何でも使って遊びを創ろう」

 いよいよ「遊び創り体験(スポーツハッカソン)」をはじめました。テーマは「学校中の何を使って遊びを創ってもよい」。子どもたちは学校中の道具を集め、新しい遊び創りに熱中し、繰り返し遊び創りに取り組みました。最初はなかなかうまくいかず、ルールや場の設定、安全面にたくさんの課題が浮き彫りになり、誰もが楽しめる遊びとして成立させることができませんでした。そこで、スポーツ創りの名人、サークルオブライフの水野さんをゲストティーチャーとしてお招きし、スポーツ創りのポイントを学びました。

 遊び創りを繰り返していく中で、「もっとたくさんの人にこの楽しさを伝えたい」と子どもたちから発言が飛び出しました。「未来の保土ケ谷の運動会」を開催して、遊び創りの楽しさを伝えるとともに、この保土ケ谷のまちを盛り上げようという目的意識が芽生えました。

7月 プレゼンテーション「なぜ未来の運動会を開くのか」

「未来の運動会」を開催するにあたり、校長先生やPTA、地域の方々に「なぜ未来の運動会を開くのか」ということをプレゼンテーションして認めてもらえるように子どもたちが動きました。

 まちの人にインタビューをして、データを集め、保土ケ谷の現状について分析しました。しっかりとした目的意識が子どもたちの中で再構成された場面でもありました。

10月 資金調達「フリーマーケット」「スポンサー企業探し」

 運動会を開催するためには、運営費や道具を借りたり、賞品を買ったりするために、資金が必要だと分かった子どもたちは、秋に資金の調達を始めました。

 自分たちでフリーマーケットを開いたり、まちの企業さんにお願いをしたりして、たくさんの資金を集めることができました。たくさんの人や企業さんが協賛してくださり、子どもたちは自分たちの活動にまちの人たちが賛同してくれる喜びを感じているようでした。

同月 広報活動「iPadでCM動画づくり」「チラシ制作」

「未来の保土ケ谷の運動会をもっと広めたい」と広告活動も行いました。横浜ケーブルテレビでCMを流してもらおうと、子どもたち自身がグループごとに合計10本のCMをiPadで作成しました。

 チラシを作成してまちの印刷屋さんに頼んで印刷をしてもらい、まちに配布しました。宿場祭りや駅前などで合計1000枚のチラシを配布しました。

 国語の時間を使って、「未来の保土ケ谷の運動会を開催するとまちにとってこんなよいことがある」と提案書を書いたり、保土ケ谷のお店やまちの人々に手紙を届けたりする活動も行いました。

 手紙がテレビで取り上げられたり、CMが実際に流れたり、まちの方々からも様々なリアクションが届いたりして、子どもたちがまちとつながっていくことを少しずつ実感している様子が伺えました。

11月 組織運営&デモンストレーション「未来の保土ヶ谷の運動会に向けた準備」

 いよいよ冬になると、本格的な未来の保土ケ谷の運動会で行う種目づくりに入りました。運営に必要な係の役割分担をします。

・「運動会屋」さんにお願いして道具を借りる。

・「満点の湯」という地域のお風呂屋さんとコラボして種目を創る。

・賞品を自分たちで調べて調達する。

・種目を説明するためのプレゼンテーション用パワーポイント資料を作成する。

「老若男女、誰もが安全に楽しめる」ことを目指して、実際に幼稚園生や自治会の方々、障害をもっている方をお招きして体験会を開きました。自分たちの創った種目が遊びとして成立するのか、検証する体験会です。

「これは楽しいね」「もっとこうした方がいいよ」と様々な感想をいただき、子どもたちは種目をブラッシュアップします。運営についての活動もそれぞれがやりたいことを決め、個々で探究しながら未来の保土ケ谷の運動会に向けて準備を進めます。

まとめ

「未来の保土ケ谷の運動会2020」は、「遊びは創れる!」を合言葉に、保土ケ谷のまちを愛する保土ケ谷小学校5年生の子どもたちが中心となって、学校×地域×企業で一緒にまちを盛り上げようという子ども発信の運動会です。

 子どもたち自身が自分たちで新しい運動会の競技を創ったり、告知のためにチラシを作成・配布したり、時にはケーブルテレビでのCMの作成、時にはフリーマーケットを開いて資金を調達したりと、総合的な学習の時間と体育の時間を使って1年にわたって学びを探究してきました。

「保土ケ谷にちなんだ競技」や「企業とのコラボ競技」、「テクノロジーを使った競技」等もあります。どなたでも参加できますので、ぜひご参加ください!


いますぐスポーツ共創をやってみよう!


今辻 宏紀

横浜市立保土ケ谷小学校 教諭

横浜市生まれ。専門は体育だが、全ての学びにおいて、子どもも教師も『愉しい』なかに本気の探求があると、日々授業の在り方を模索している。

この記事はスポーツ庁 2019 年度
「スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト・新たなアプローチ展開」にて作成された記事です。
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